エア と はたけに おちた なみだ

 あついひざしを うけて、
 おおきな はたけを たがやす おとこのまわりに、
 たくさんの こどもたちが あつまってきます。

 ここは、ちいさな のどかな むら。

 むらのひとたちのために、
 やさいをつくる、そのすがたに かんどうした エアも、
 いっしょになって あせを ながすのでした。

 あるひのこと。

 おとこの はたけに、ぶきをもった おとこが やってきました。
 そだてた やさいを うばいにきたのです。

 おとこは、おおきく くびを よこにふりました。

 おこった ぶきをもった おとこは、つれてきた てしたに、
 おとこを つれさるように めいれいします。

 とおざかっていく くるまの かげを、
 こどもたちが しんぱいそうに みつめているのでした。

 つぎのひのこと。

 おとこは、かえって きませんでした。

 かわりに、ぶきをもった おとこが、また やってきました。
 そして、なにかを じめんに なげすてると、
 やさいを よこすように さけびます。

 それは、おとこの てぬぐいでした。

 むらの おとなたちが、じゃまをする こどもたちを むしするように、
 はたけの やさいを ほりおこそうとします。

 そのときです。

 ぶきを もった おとこが、おおごえを あげました。

 エアが、じめんに おちた てぬぐいを ひろいあげたのです。

 そして、かべに たてかけてある くわを てにとると、
 はたけを たがやし はじめました。

 それに つづくように、こどもたちも、
 おとこに おそわったように はたけを たがやし はじめます。

 ぶきを もった おとこが、
 エアに その ほこさきを むけました。

 きびしいめをして、おとこを にらみつける、エア。
 その めには、なみだが にじんでいました。

 「ただしいことは、ぜったいに うしなわれない。
  だから、わたしは まけないわ」

 ひとすじの かぜが、はたけを なでるように ふきました。

 エアのまえに、こどもたちが。
 それを とりかこむように、むらの おとなたちが あつまります。

 ぶきをもった おとこは、すてぜりふを はいて、にげていきました。
 
 とおざかっていく くるまの かげ。
 その よこを、どろだらけになった、
 あの おとこが あるいてくるのでした。

執筆日:2008年8月28日 00:00 作:まみや

エア と きんいろの かがやき

 あめのふる ほそいみち。
 みずたまりを ふみしめる、おおきな あし。
 
 だいちを おもわせるように つらなっていく、ひとのかげ。

 その すがたを みつめながら、
 エアは しんけんな まなざしを しています。

 ここは、まるい ちいさな むら。
 たくさんの ひとたちが、やまおくへと むかっていきます。

 そこに あるのは、おおきな きんざん。
 むらのひとたちは、
 そこでとれる きんを うって せいかつしているのでした。

 そのひの よるのこと。

 エアは、ひとりの しょうねんに であいました。
 ほそい かたを ふるわせて、
 きんざんへ むかった ちちおやの ぶじを いのっています。

 エアは、しょうねんの かたに てをおくと、
 しずかに ほほえみました。

 きんざんの ほうから おとが きこえます。

 むらのひとたちが かえってきたのです。

 ひとり、また、ひとり。
 いえのなかから、たくさんの ひとたちが でてきます。

 そして、
 みんな、かぞくの ぶじを たしかめるように、
 だきしめあいます。

 しょうねんの めに、ちちおやの すがたが うつりました。
 かけだす、しょうねん。

 ちちおやは、しょうねんを だきしめると、
 ちいさな あたまを くしゃくしゃと なでました。

 そのすがたを みまもるように、
 しょうねんの ははおやが みつめています。

 しょうねんは、ちちおやから はなれると、
 なにかを まちわびているような かおをしました。

 きんざんからの おみやげです。

 エアが、あたりを みわたすと、
 みんな、ぎんや どう、きれいな いしなどを かぞくに みせています。

 その かおは、どれも ほこらしげに かがやいていました。
 
 しかし、しょうねんの ちちおやの かおだけが、
 くもった よぞらと おなじように、くらくなっていました。

 しょうねんは、しずかに うつむきました。
 ははおやが、しょうねんを うしろから だきしめます。

 しょうねんの ともだちが かけてきました。
 
 そして、しょうねんを ゆびさして わらいものにします。
 ともだちたちの ては、どれも いしを にぎっていました。

 ちちおやが、しぼりだすような こえで、しょうねんに あやまりました。
 めには、あふれんばかりの なみだが たまっています。

 しょうねんの つくりえがおが、なによりも つらく かんじられました。

 そのときです。

 だれかが、ちちおやの かたを たたきました。

 エアです。

 そして、しずかに じぶんの ひたいを ゆびさします。

 ちちおやも、つられるように じぶんの ひたいに ふれました。

 そこには―。

 たくさんの あせが にじんでいました。
 たくさんの すすが たまっていました。
 
 おもいかえすは、きょうまでの くるしみ。

 おもい にもつを かついだことも ありました。
 たかい やまを のぼったことも ありました。

 その おかげで、きんざんで しごとが できたのです。

 ちちおやの めから、なみだが あふれました。
 もう、がまんすることが できませんでした。

 「その あせにこそ、いみがある」

 そらを おおっていた くもの あいだから、
 きれいな つきが かおを のぞかせます。

 さんにん つれだって、あるいていく ちちおやの せなかが、
 きんいろに かがやいているように みえるのでした。

 

執筆日:2008年8月21日 00:00 作:まみや

エア と なつの おはかまいり

 ちいさな まち。
 つぎつぎ と あつまってくる、きかんしゃ。

 もうもうと、けむりを はきだして、
 きかんしゃは つぎのえきへと むかいます。

 ここは、みわたすかぎり みどりのひろがる、
 ちいさな ちいさな いなかまち。

 とおくの ほうから ただよってくる
 せんこうの かおりに、エアは むかしを おもいかえすのでした。


 そのひの ゆうがた。

 エアは、ひとりの しょうねんに であいました。

 ボロボロになった ギターケースを かかえた、
 ちいさな ギターひきです。

 おおきな ゆめを えがいて、
 とかいへと むかった しょうねん。

 その、おおきすぎる ゆめに、
 しょうねんは おおきな まよいを かかえていました。

 ゆめは、かなうのだろうか?
 このみちは、まちがっては いないだろうか?
 
 そんな ふあんばかりが、しょうねんの こころを しはいします。

 エアと しょうねんは、おはかの まえに たどりつきました。

 エアは、むかし おせわになった ひとの おはかを。
 しょうねんは、めいわく ばかりかけた、おばあさんの おはかを、
 それぞれ おまいりました。

 そのときです。


 てをあわせ、めをとじていた しょうねんの めが、
 きゅうに ひらかれました。

 エアも、それに きがついて、そっと しょうねんのほうを みつめます。

 しょうねんは、なにを おはなに いのったのでしょう。

 ゆめが かないますように。
 じぶんのみちが、まちがいで ありませんように。

 その ことばに、
 おばあさんは、なにかを つたえたのでしょう。

 しょうねんが、おどろいた かおをして、エアに はなしかけました。

 「あなたの ゆめを かなえるのは、だれでもない あなたなのですよ」

 どんなに てを あわせても。
 どんなに つよく ねがっても。

 いま、できることは いま できることだけ。

 なにかに ねがいを かけるということは、
 どこかに ねがいが かなわないと おもっているから。

 そんな ねがいは、きっと かなうことは ないでしょう。

 ゆうひが しずむころ、かぜが すずしさを まといました。

 ボロボロのギターケースを にぎりしめて、
 しょうねんは、また、きかんしゃを めざすのでした。

 

執筆日:2008年8月14日 00:00 作:まみや

エア と エア

 ひろい そうげんに ねそべって、
 エアは あおいそらを みつめています。

  ねえ、そら さん。
  どうして、あなたは あおいそらなの?

 そらは、ただ あおいすがたで、エアを みつめています。

  ねえ、くも さん。
  どうして、あなたは かたちを かえるの?

 くもは、ただ ながれるままに ながれています。

  ねえ、かぜ さん。
  あなたは、いったい どこへ むかうの?

 かぜは、ただ エアを めでるように、どこかへむかうのでした。

 あおい そら。
 しろい くも。
 すずしい かぜ。

 おおきな たいよう。
 ほほをなでる くさ。
 すべてを かなでる おと。

 どれも、エアのことばに こたえるものは ありませんでした。

  ねえ、みんな。
  わたしは いったい どこへ いけばいいの?
  わたしは いったい だれなんだろう?

  おしえて。
  おしえてよ。

 エアの なみだが、あさつゆのように くさのうえに おちました。

 そのときです。

 そこに、あおい そらが ありました。
 そこに、しろい くもが うかんでいました。
 そこに、すずしい かぜが ふきました。

 そこに、おおきな たいようが ありました。
 そこに、ほほをなでる くさが ありました。
 そこに、すべてを かなでる おとが ありました。

 それは、ひとつの メッセージを エアに とどけてくれたのです。

 「ただ、あるがままにだよ」

 あおいそらは、そらが あおいから、あおいそらで。
 しろいくもは、かたちが かわるから、かたちが かわって。
 かぜは、どこかへ むかうから、どこかへ むかって。

 たいようも、くさも、おとも。
 すべてが それだけ。

 エアは、ゆっくりと たちあがりました。

 そこには、たちあがった エアのすがたが あるのでした。

執筆日:2008年8月 7日 21:41 作:まみや
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