せかいじゅうの おうさまたちが
ちいさく てをふって あいさつするのを、
エアは うれしそうに みつめているのでした。
ここは、せかいの まんなかの おおきな まち。
おうさまたちの かいぎが、
きょうから はじまったのです。
たくさんの もんだいを かかえた せかい。
それは いまに はじまった ことでは ありません。
それでも、
きのうより、きょうを。
きょうより、あしたを すこしでも すてきにしたい。
そのおもいは、
どの おうさまも いっしょのよう。
あついひざしが、
まちじゅうを つつみこんでいるのでした。
まちのなかは、
せかいで いちばんの ひとごみでした。
エアは、このまちの おみやげひんを ながめながら、
おしろへと むかいます。
おしろの まえは、
たくさんの ひとだかり。
へいしたちが、
ひっしに むらびとに なにかを いっています。
ふと、わきのくさむらを みつめると、
だれかが すわりこんでいるのが みえました。
エアは、そっと そのひとに ちかづくと、
ポン、と かたを たたきます。
おどろいて とびあがる、そのひと。
まだ わかい コックさんでした。
おうさまたちに デザートを だせって。
もう、なにを だしたらいいのか わからなくて。
コックさんのことばに、
エアも いっしょになって まゆを ひそめます。
もうすぐ ひがくれて しまいます。
タイムリミットは、どんどん ちかづいているのでした。
そのひの よるのこと。
おうさまたちは、
はこばれた ゆうしょくに てもつけずに、
はなしあいを つづけました。
こんな りょうりは、わたしの くに にもある。
いまは しょくじより、はなしあいが さきだ。
どの おうさまたちも、
めをうばわれるような ごちそうに みむきもしません。
そのようすを ちゅうぼうから のぞいていた、コックたち。
がっくりと かたを おとします。
とつぜん、おおきな こえがきこえました。
ある くにの おうさまが、どなりごえを あげています。
どうやら、ほかの くにの おうさまの いったことが、
かんに さわったのでしょう。
それを くちびに、
どの おうさまも、おおごえで どなりはじめました。
おなかがすいて、
イライラしていたのかもしれません。
ごちそうが ひっくりかえされました。
そこかしこで、しょっきの われる おとがします。
おしろの へいしたちも、
とめられないほどの さわぎになりました。
そのときです。
だれかが、すずしいかおで
テーブルまで やってきました。
あの わかいコックでした。
その うしろから、エアも ついてきます。
コックのふくをきて、ほんとうに りょうりにん みたいです。
わかいコックは、
おうさまたちのせきに、
つぎつぎと デザートを おいていきます。
それは、どこにでもあるような かきごおり。
とても、おうさまに おだしするような ものではありません。
おこった ある おうさまが、
わかいコックのかたを つかみます。
これは、ある とくべつな こおりを つかった
かきごおりです。
コックのことばに、
かいじょうは しずまりかえりました。
この こおりは、わたしの ふるさとに ある こおり。
...もうすぐ なくなってしまう こおりです。
コックのふるさとは、
きたにある ゆきぐにでした。
せかいじゅうが あたためられたせいで、
その ゆきぐににある こおりが とけだしたのです。
こどものころ、ははおやが
この かきごおりを つくってくれました。
コックは、テーブルのうえの かきごおりを てにとりました。
その あじが わすれられなくて、
わたしは りょうりにんに なろうと きめたのです。
エアが しずかに ほほえみます。
わたしの ほかにも、
そんな ゆめを いだいた なかまは おおぜい います。
コックは しずかに うつむきました。
でも、その ゆめを、
いまの こどもたちが みることは ありません。
おうさまたちも うつむいて しまいました。
どうか、ゆめを とぎれさせないで ください。
たいせつな この かきごおりを なくさないでください。
コックは、それだけいうと、
しずかに ちゅうぼうへと もどっていきました。
ひとりの おうさまが かきごおりを すくって たべました。
ほかの おうさまも かきごおりを すくって たべました。
それは、なつかしい あじ。
わすれていた たいせつな あじでした。
おうさまたちは、
かきごおりを たべながら せきにつきます。
そして、コックたちに おわびをいって、
もういちど りょうりを つくってくれるように おねがいしました。
「せかいを よくしたいのは、みんな いっしょなんだよ」
はなしあいは つづくでしょう。
たのしい ゆうしょくの あとに。
つきあかりが、かいじょうを てらしました。
どこからか、ちきゅうの やさしいこえが、
きこえてくるような きがするのでした。
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