真っ白い部屋に、赤い髪の女の子が独りきり。
遥か上空に、小さく青空が見えます。
ふわふわの地面から、小さな足が離れていくのが感じられました。
ゆっくりと、空に向かう、女の子。
世界中のどこかにある、ハートのペンダント。
今は、それを探す旅の途中なのでした。
白い部屋を抜けた女の子の目の前に、大きな砂浜が映りました。
七色の虹が、水平線にアーチを作り、
パステルカラーのカニが、楽しそうに水浴びをしています。
女の子は、海に浮かんでいる、小さないかだに飛び乗りました。
ゆっくりと動きだす、いかだ。
水玉模様のイルカたちが、女の子に手を振ります。
いかだは、どんどん進みます。
青い目をした太陽が、ギターをかきならしながら、
女の子を応援する歌を歌っています。
素敵な音楽に口笛を吹いていると、
遠くに新しい大陸が見えました。
次は、どんな冒険が待っているのだろう。
女の子が、心弾ませていると、大陸の方から、
黒い雨雲がやってきました。
辺りは、一斉に嵐になります。
太陽も、どこかへ逃げ出したようでした。
女の子は、必死でいかだの柱にしがみつきました。
意地悪な風は、いかだを海の方へ、海の方へと押しやります。
それでも、何とか、いかだは岸へと辿り着きました。
びしょ濡れになった女の子を、暖かな日差しが照らし出します。
太陽が、にっこりと微笑んでいるのでした。
女の子の旅は続きます。
寒い寒い、冬の森で迷子になったり、
うだるような暑さの砂漠で、ありじごくの巣にかかったり。
何度も、くじけそうになりました。
何度も、お家に帰りたいと思いました。
それでも、女の子はあきらめません。
どこかにある、ハートのペンダント。
それを見つけるために、
負けるわけにはいかないのです。
その気持ちのおかげで、女の子は、ようやく、最後の町にやってきました。
この町に、ハートのペンダントはあるんだ。
女の子は、キズだらけの足を引きずって、町の中を探し続けます。
しかし、どんなに探しても、ペンダントは見つかりません。
星降る夜の町。
女の子の涙が、地面にひとつ、こぼれ落ちました。
その時です。
女の子の目の前が、急に明るくなったかと思うと、
それまで真っ暗だった町が、急に明るく輝き出すではありませんか。
眩しそうに目を細める女の子に、誰かが声をかけました。
後ろを振り返る、女の子。
そこには、見たことの無い男の子が立っていました。
女の子を見つめ、にっこりと微笑んでいます。
その笑顔に、女の子は、それが誰なのか気がつきました。
太陽です。
あの、青い目をした太陽が、男の子になって、現れたのでした。
女の子は、ふらふらになりながら、男の子の方へと向かいます。
思わずつまずいてしまった、女の子の体を、
男の子が優しく抱きとめます。
女の子の鼓動は高まりました。
どんどん、どんどん。
心臓の音が大きくなります。
すると、女の子の胸元が、急に輝き始めました。
光が収まると、そこには、ハートのペンダントがありました。
女の子の夢が叶ったのです。
嬉しそうにはしゃぐ女の子を、
男の子が優しい瞳で見つめているのでした。
パタン、と本を閉じる音が部屋中に響きました。
エアは、壁にもたれながら、
お話しを聞いていた女の子を見つめています。
その子供を、一人の女の人が抱きしめました。
赤い髪が、夜の風になびきます。
その姿を、コーヒーを持ってきた男の人が、
その青い目で、幸せそうに見つめています。
「おかあさんからもらった、たいせつなハート。すこしずつ、おかえしするからね!」
女の子の言葉が、女の人の心に響きました。
それは、何よりの、母の日のプレゼントになるのでした。
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