薄い青色をした小さな鳥たちが、
雲ひとつ無い空に溶けていくのを、
エアは太陽に目を細めながら見つめていました。
ここは、小さな町の側にある、小さな森。
青い鳥たちは、この森で生まれ、
そして、世界に向けて飛び出していくのです。
この鳥たちが、どこへ行くのか。
それは、分からないけれど、
どこへ行っても立派に生きていけるように育てるのだ。
おじいさんはそう言って、嬉しそうに額の汗を拭うのでした。
その日の夜のこと。
夕食の食器を片付け終えたエアは、
おじいさんに勧められたコーヒーを片手に、
のんびりとイスに腰掛けました。
ゆったりとした時間が流れます。
ふと、顔をあげると、そこにはキレイに彫られた彫刻が見えました。
おじいさんが彫った、青い鳥の彫刻です。
その隣には、数え切れないほどの青い鳥と一緒になった、
おじいさんの写真がありました。
昔は、こんなに鳥がいたんだ。
おじいさんは、手に持った新聞を机に置くと、寂しそうにつぶやきました。
一度、森を離れた鳥は、滅多に帰ってくることはありません。
遠くの島には、
たくさんの鳥がいて、
たくさんのおいしい餌があって、
たくさんの楽しいことがあって。
こんな何も無い森に帰ってくる鳥は、本当に少ないんだ。
おじいさんの笑顔も、
とても弱々しく感じられました。
コーヒーを机に置いたエアが、
優しくおじいさんの肩に手を置くのでした。
次の日のこと。
おじいさんは、遠くの町まで、
鳥たちの餌を買いに出かけました。
帰りは、夕方になってしまいます。
それを見送った、エア。
ニコッと笑うと、すぐに小屋の中へと戻っていきました。
森中に響く、コーン、コーンという音。
昼過ぎまで続いた音は、やがて、エアの笑い声に変わりました。
エアの頭の中には、おじいさんの喜ぶ顔が映っているのでした。
夕方になりました。
遠くの町から戻った、おじいさん。
森の方から声が聞こえてくる事に気がつくと、
買ってきた餌を玄関に置いて、すぐに森へと向かいます。
木々の間を抜けて、声のする場所にたどりつきました。
そのときです。
おじいさんの目には、たくさんの町の人たちが、
一生懸命に仕事をしている姿が映りました。
雑草を刈っている人。
花の種を植えている人。
木箱を木の上に取り付けている人。
エアが、おじいさんを見つけて、駆け寄ってきます。
手には、青い鳥の写真と、不恰好な彫刻がありました。
森に響いていた音の正体。
それは、エアが彫刻を作る音だったのです。
完成した彫刻と、青い鳥がたくさん写った写真を持って、
エアは町中をまわりました。
この町の鳥たちが、また、戻ってきますように。
この写真のように、たくさんの青い鳥が息づく森になりますように。
その願いを、町中の人たちに届けたのです。
町中の人たちは、すぐに、エアに協力してくれました。
この町が大好きな人たちばかりです。
本当は、おじいさんに協力してあげたかったのですが、
そのキッカケがつかめずにいただけなのでした。
おじいさんの目から、ボロボロと涙が溢れました。
こんなにも、この森を愛してくれる人たちがいるんだ。
エアは、静かに微笑みました。
「この町は、きっと蘇る」
オレンジ色の空が、森を優しく包み込みました。
赤く染まった青い鳥が、遠くの空に見えてくるのでした。
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