色褪せた想い出

今年も年賀状を書く時期がやってきた。

年末の俺は、いつもつい先延ばしにしてしまって、結局3日に届くギリギリの期限に出すことが多かった。

それは社会人になっても変わらない。

ここ3年、同僚に対する年賀状が1日に届いたことは、自慢じゃないが1度も無い。

 

しかし、今年は社会人4年目のベテランとして気分を入れ替え、早くから年賀状のデザインを作り、パソコンで一気にプリントアウトした。

これで宛名を書くだけでいつでも出せる。

 

いつでも出せると思っているから、結局先延ばしにする。

 

ということで、2007年12月28日現在、仕事から帰ってきてしばらくダラダラと年末番組を見た後、けだるい体を奮い起こして年賀状の宛名書きに取り掛かった。

 

しかしテレビを横目に見ながらだからまったく進まない。

年末番組が面白すぎて、ただ笑って時間が過ぎていく。

「あ~~、もう!」

 

書くという作業だからいけないんだと思い、去年以前の年賀状の整理をすることにした。

これならテレビを見ていても、なんとなくできるはずだ。

 

僕は引き出しの奥のほうからこれまでの年賀状の束を引っ張り出してきて、これまで誰に年賀状をもらってきたかの整理を始めた。

 

当然、お察しの通り、懐かしさに浸ってしまい、整理どころではない。

「うわぁ~、タケちゃん懐かしいなぁ」

「アハハ、こいつこんなこと書いてたんだなぁ・・」

 

昔の年賀状は、ちょっと色褪せて茶色がかかっているけれど、想い出は色褪せずに残っている。

 

差出人を見て、裏側を見て・・・というように1枚ずつめくっていくと、「森川 千春」という名前がきれいな字で書かれている年賀状があった。

 

「あ・・・千春だ」

 

森川千春は、僕が大学の時まで付き合っていた彼女だ。

地方の大学から、東京に就職をすることになって、頑張って遠距離恋愛をしてみたけれど、結局お互いに力尽きて別れてしまった。

そういえば、「遠くに離れていても、時間が経つ分だけ想いが強くなる二人でいようね」なんて言っていたけれど、千春はこの年賀状を最後に連絡をよこさなくなった。

ちょうどそれは、二人の間に限界が来ていて、俺が別れ話を持ちかけた辺りに当たるから、結局あいつも疲れたんだろうな・・・。

 

そう思って裏を見た。

そこには、その当時は確かになかった文字が、年賀状の裏全体に浮かび上がっていた。

 

「大好き」

 

あぶりだしみたいにミカンの汁を絞って書いたのか、どうやったのかわからない。

でも、確かに「大好き」という文字だけが、他の部分よりも色褪せて、まるで茶色の文字のようにうっすらと、でもはっきりと浮かび上がっていた。

 

そういえば、お互いに遠距離恋愛に疲れが見えて来た頃、

電話で「時間が経つ分だけ思いが強くなる二人でいようね!」ってあいつが言った時、俺は

「やってみろよ! そんなの無理だよ。 もう疲れたよ・・・。別れよう」って、別れ話を切り出したんだ。

 

電話の向こうであいつは困ったような、泣いているような声で、「わかった」って言った。

 

もしかしたらあの時の「わかった」は、「別れよう」に対してじゃなく、「やってみろよ!」に対してだったのかもしれない。

俺が勝手に疲れて、勝手に別れ話を切り出した後も、あいつとあいつの出した年賀状は色褪せない思いを抱えて、俺の手元にあった。

 

色褪せた分だけ、色褪せない気持ちになった年賀状。

 

もう一度付き合って欲しいとか、友達としてとか、そんなことを言うつもりはまったく無いけれど、

なぜだか「ありがとう」と「ごめん」だけは伝えなきゃと思い、俺は携帯を手にとって、賑やかに笑うテレビのスイッチを切った。

 

 

執筆日:2008年1月 1日 04:15 作:癒し人
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