なぜこうなったんだろう・・。
そして、なぜいつもこうなるんだろう。
初売りで賑わう百貨店のブランド品コーナーを、人ごみを掻き分けながら一人でエレベーターの場所に向かった。
休憩用の椅子に座ろうと思ってやってきたのに、3席あるソファーは全て埋まっていて、オレは福袋を両手に抱えて立ち尽くした。
恭子にプレゼントを買うはずだった。
けっしてお金持ちでは無いけれど、こういう時くらい奮発してプレゼントをして、男らしいところを見せたかった。
最初は、「プレゼントを買おうと思ってるんだ」とオレが言ったのに対して、
「いいよぉ~、悪いし。 それよりどっかでお茶しよ。足が疲れちゃった」と、恭子が応えたところから始まった。
せっかく大事にしたい気持ちを踏みにじられた気がして、やり場の無い寂しさと、期待通りに進まなかった苛立ちで、
「なんだよ、オジサマに貢いでもらってんじゃねーの?」とか
「オレのことを見下してるんじゃないのか?」とか、
情け無い言葉を恭子に浴びせた後、「いらねーならいいよ、もう!」と、女の子ちゃんみたいな暴言を吐いて一人でさっさと売り場を離れた。
恭子は、せっかくオレが大事にしてやりたい気持ちなのに、それが全然わかっていない。
自分のことばっかり考えて、中途半端に気遣いやがって。
最近、いつもそうだ。
オレが歩み寄ろうとすると、あいつは逃げていく。
恋人って、もっと信頼しあって、もっと仲良くやるもんじゃねーのか? って、いつもいつもいつもいつも、あいつにぶつけてしまう。
「くそう・・・新年早々・・・」
と、ぼやいた時、突然大きな泣き声が耳に飛び込んできた。
それは、福袋の商品を買って欲しい幼稚園くらいの子どもが、売り場で駄々をこねて泣き出した声だった。
母親が子どもを叱りつける。
「うるさいわね! 置いてくよ!」
子どもは構わず泣き続ける。
「ほらぁ~、さっさとしないと! 迷惑でしょ!」
と言って子どもを強引に引っ張っていく。
子どもは自分で立つ気持ちがまったくないので、ずるずると引きづられるように去っていった。
なんか、どっちもオレみたいな気がした。
欲しい欲しいばかりで泣いている自分。
相手の主張を聞かずに叱りつけた自分。
恭子を大事にしたいと思っているのに、いつも喧嘩してしまう理由は、そんなところにあるように思えた。
あの親子だって、心のそこではお互いを必要としている。
でも、それが何かのきっかけでずれてしまって、ケンカになったりする。
福袋につまった福を買いに来て、喧嘩してたら世話無いな・・と思った。
気がつくと、恭子が目の前にふくれっつらで立っていた。
「おう・・・」と、不器用な声をかける。
「じゃぁ、買って」と、恭子が小声でつぶやいた。
「ん、いいよ」
「バーキンね」
「は?」
「エルメスのバーキン」
「・・・・・・!!
いやいやいやいやいやいや!!」
本気であわてたオレを、恭子がぷっと笑った。
「んだよ・・笑うなよ。マジでびっくりしたんだから」
「じゃぁどっちがいい? バーキンおごるか、コーヒーおごるか」
「・・・・・・コーヒーで勘弁してください」
「よし、奢らせてあげよう♪」
と言って、恭子が腕を組んできた。
好きってなんだろうなと思う。
恋人って何だろう。
きっと、バーキンよりも高くて、コーヒーよりも身近なものなんだろうと、よくわからないことを考えながら、行列ができている安いコーヒーショップに二人で笑いながら並んだ。
『5分で癒される物語』を気に入っていただけたら、『お気に入り』に登録いただき、
今度はあなたのお友達にも、ぜひこの物語を教えてあげてください。
また、上のQRコードをクリックすると、携帯電話用のURL送信画面が開きます!
PC版のURLをお友達に送信
http://iyashi-story.com
『5分で癒される物語』を一緒に盛上げてくださる作家さんを募集しています!
詳しくは『作家さん募集ページ』まで
癒しの物語はリンクフリーです。
下のバナーを自由にお持ち帰り下さい。
![]()
(88×31 :小)
![]()
(100×28 :中)
![]()
(150×42 :大)
【ご紹介文】
5分で癒される物語を配信しています。時間がない人でもちょっとの時間にちょっとだけ元気になれる作品集
相互リンクについてはリンクページを準備中です。