悪いかよ

高校を卒業して、もう10年。

20人が集まった同窓会兼忘年会は、3次会を迎える頃には、当時のツレの4人に減っていた。

ビールと料理を適当に注文して待っている間、会話はだんだんお互いのプライベートな部分に入ってゆく。

 

「へぇ~、シゲ離婚したんだ。 じゃぁ、独身貴族を謳歌中か」

「そんなんじゃねぇよ、処理とかいろいろで大変なんだからさ」

「タケシのところは子ども大丈夫なのか?」

「今日はカミさんに頼み込んだから。本当は2次会までっていう約束だったけど、ここまできたら飲むしかないっしょ」

タイミングよく、中ジョッキが4つ運ばれてくる。

周りは同じく忘年会の3次会か4次会をやっている人が多いらしく、もう12時をまわるのにお祭りのようにうるさい。

 

「んじゃ、カンパーイ!」

 

ガチンと、分厚いジョッキが重なる音がして、4人でうまそうにジョッキを半分あけた。

 

「そういえば、リョウはまだ続けてるの?」

「え、なになに、何の話?」

「いや、こいつさ、昔から『作家になる!』って言ってたじゃん」

「そうだそうだ!! 印税生活じゃん! 『ホームレス中学生』書かなきゃ! ギャハハ!!」

「ヅッチー笑いすぎだって!」

「すんませーん、ビールもう4杯ね!」

 

僕は高校の時、作家になりたかった。

別にたいした理由じゃない。たまたま読んだ「三国志」が面白くて、なんとなくこういうの書きたいなぁ~って思い始めていた。

 

書いた作品をいくつか応募してみたけれど、まったく反応がなかった。

でも確実に、「表現する楽しみ」を覚えきていた。

 

それから、学校でチョコチョコ作品を書くようになって・・・周りからいじめられた。

 

(気持ちわる! 小説なんか書いてんじゃねぇよ!)

(暗い~、なんかあいつがいると暗いよね・・)

 

運動が嫌いだったわけじゃないけれど、段々と嫌いになっていった。

「小説を書く奴」=「運動ができないガリ勉」 という、今では笑ってしまうような公式が、俺の高校では当然のように根付いていた。

 

(もうやめようかなぁ・・・)

(なんでバカにされながらこんな夢追わなけりゃいけねーんだよ)

(てゆうか、お前ら勉強しろよな。 運動って言ったって、中途半端にできるくらいだろうが)

(もう高校生なんだからガキみたいなことしてんじゃねぇよ)

 

(あ~あ、もう学校いきたくねーな。どうせ今から作家になるの辞めても、こいつらいじめ続けるんだろうな・・)

 

何もかもが嫌になった時、

 

「お前すげーじゃん!」

当時、サッカー部のエースだったタケシが、声をかけてきた。

 

「これお前だろ?」

それは当時、いくつか応募した作品の一つだった。

高校生くらいの奴ならみんな知っている漫画週刊誌『ルミックス』の最後の投稿ページに、作品を送ったのが、今日発売の週刊『ルミックス』に掲載されていた。

 

「さっきツレと読んでてさぁ、たまたま見つけてさ!」

 

僕も、今知った。

どうせまた落選だろうと思っていたから、すっかり忘れていた。

確か、なんの変哲も無い高校生が、ペンから出る不思議な力で事件を解決していくという、超短編の小説だ。

 

タケシは「やるじゃん!」と背中を軽く叩いて、部活へ行った。

僕の周りの評価が変わったのは、それからだ。タケシが何をみんなに言ったのかは、僕は知らない。

 

 

「で、続けてんの?」タケシがもう一度言った。

「たしかお前、IT関係の仕事に就職しなかった?」

「まじか、じゃぁ六本木ヒルズのほうだな! ギャハハ!」

 

「仕事はIT関係じゃなくて、広告代理店だよ。

 小説は・・・」

 

タケシもシゲもヅッチーも、一瞬「お?」という顔で止まった。

 

「まだ何も芽が出てねぇけど、続けてるよ」

 

みんなが「お?」の顔のまま止まってる。

 

「・・・悪いかよ」

 

「・・・」

 

「ギャハハーーーーーーー!!!」

「お前相変わらず暗ぇって!」

「てゆうか、夢語るなら大声で語れや!」

「何があったかって心配になるべや!」

 

んだよぉ・・といいながら、ネギマを一本とってビールをすすった。

 

「全然悪かねぇって」

あの時のようにタケシが肩を叩いた。

 

「諦めなかったら、夢は成功の途中だ。失敗じゃねぇ」

「お前l、ぜってぇデビューしろよ!」

「ヒルズパーティー呼べよ! ギャハハ!」

 

やっぱりこいつらは最高だと思った。

こんな仲間との思い出は、何回忘年会をやっても、絶対に忘れたくは無い。

執筆日:2007年12月29日 02:14 作:癒し人
5分で癒される物語QRコード
5分で癒される物語 インフォ

『5分で癒される物語』を気に入っていただけたら、『お気に入り』に登録いただき、
今度はあなたのお友達にも、ぜひこの物語を教えてあげてください。

また、上のQRコードをクリックすると、携帯電話用のURL送信画面が開きます!

癒し人.com
5分で癒される物語 インフォ

『5分で癒される物語』を一緒に盛上げてくださる作家さんを募集しています!

詳しくは『作家さん募集ページ』まで

5分で癒される物語 インフォ

癒しの物語はリンクフリーです。
下のバナーを自由にお持ち帰り下さい。

5分で癒される物語バナー
(88×31 :小)

5分で癒される物語バナー
(100×28 :中)

5分で癒される物語バナー
(150×42 :大)

【ご紹介文】

5分で癒される物語を配信しています。時間がない人でもちょっとの時間にちょっとだけ元気になれる作品集


相互リンクについてはリンクページを準備中です。