エア と 3びきのこぶた

 ほんだなに ならんだ、たくさんの ほん。
 そのなかから、エアは いっさつの えほんを とりだしました。

 なつかしい、その えほん。
 せかいじゅうの こどもたちが しっているような、
 ゆうめいな おはなしです。

 エアは、そばにあった イスに こしかけると、
 しずかに その えほんを ひらくのでした。


 あるところに、3びきの こぶたが すんでいました。

 いちばんうえの こぶたは、ブー。
 まんなかの こぶたは、フー。
 いちばんしたの こぶたは、ウー といいました。

 あるひのこと。

 こぶたたちの おかあさんが、
 こどもたちを あつめて いいました。

 おまえたちも、もう りっぱな おとなに なる としです。
 そろそろ じぶんたちの いえを たてなさい、と。

 3びきの こぶたは、
 すぐに そとに でかけていきました。

 そして、おもい おもいに、
 いえを たてはじめます。

 ブーは、じぶんで いえを たてるのが めんどうだ、と、
 コンクリートで できた、りっぱな マンションを かりました。

 フーは、じぶんで あたらしい いえを たてるあいだ と、
 きで できた、がっしりとした ちいさな いえを かりました。

 ウーだけが、ボロボロの いたを かさねて、
 ちいさな ねどこを たてるのでした。


 しばらくして、ブーとフーが、
 ウーの いえを たずねて いいました。

 なんだい、その ボロボロの いえは。

 おれのいえは、りっぱな マンションだ。
 ぜったいに こわれる ことは ないさ。

 おれのいえだって、ちいさい けれど、がっしりした いえだ。
 ぜったいに こわれる ことは ないさ。

 ウーは、わらわれているにも かかわらず、
 おこりもせずに、しずかに ほほえんでいます。

 ブーとフーは、おおきなこえで ウーを ばかにしながら、
 それぞれの いえへと かえっていくのでした。


 そんな あるひのこと。

 3びきの ところに、
 おおかみが やってきました。

 ブーは、マンションの なかから、
 おおかみを ゆびさして わらいます。

 この マンションのなかにいれば、
 なにも こわいものなんて ないさ、と。

 しかし、ブーは、とつぜん マンションを おいだされて しまいます。

 おおかみが まちで あばれたせいで、
 しごとが できなくなった マンションの もちぬしが、
 この たてものを こわして おかねに かえることにしたのです。

 おおかみが、ブーを おいかけてきます。

 いそいで、フーの いえに にげこむ、ブー。

 しかし、フーのいえは どこにも みあたりません。
 フーの いえもまた、こわして おかねに かえられたのです。

 あたらしい いえを たてることを なまけていた フーも、
 ブーと いっしょに おおかみから にげることになりました。

 2ひきは、ウーの ところに やってきました。
 
 さいわい、ウーのいえは、まだ こわされていません。

 しかし、いえのなかに ウーの すがたは ありませんでした。

 かわりに、やまのように つまれた たくさんの ほんと、
 いちまいの てがみだけが おかれていました。

 てがみには、こう かかれていました。

 『だれかの ちからを、
  じぶんの ちからと かんちがいしていた、にいさんたちへ。

  ぼくは、にいさんたちが あそんでいる あいだ、
  いっしょうけんめいに べんきょうしたよ。

  とうぜん、おおかみが ここにむかっていることも、
  とおい まちの ともだちから きいていた。

  だから、ぼくは このまちから でていくよ。
  もう あうことも ないと おもうけど、いままで ありがとう

  ウー』

 おおかみが ボロボロのいえを こわして、なかに はいってきます。

 たべられる!と おもった しゅんかん、
 おかあさんが 2ひきを たすけてくれました。

 ブーとフーは、わんわん なきながら、
 おかあさんに おれいを いうのでした。

 おしまい


 ほんを おいた、エアに だれかが こえを かけました。

 そこには、かしこそうな ぶたが たっていました。

 「だれかを わるものに しているけれど、
  あなたは なにか していたのかしら?」

 まどから さしこむ ふゆのたいようが、
 かぞえきれないほどの ほんたちを てらしだします。

 ぶたに ついて、へやを でていく エア。
 おちゃの じかんです。

 とじられた ほんの さいごに、
 『さく ウー』と かかれているのでした。
 

執筆:2008年12月18日 00:00 作:まみや

エア と たくさんの なかまたち


 まどべから みあげる そらは、
 きのうから どんよりとした はいいろ。

 いまにも、ふりだしそうな くもを みあげて、
 エアは ひとつ せきを するのでした。


 ちいさな へやのなかで、
 エアは ベッドに よこたわっています。

 かぜを ひいたのでした。

 おもいだすのは、げんきだった ころのこと。


 じてんしゃで ふうしゃごやの ある そうげんを、
 げんきに はしりまわった ことも ありました。

 じしんに まけない まちで、
 ちいさな あいに ふれたことも ありました。

 みあげた そらの あおさに、
 こたえのない しつもんを したことも ありました。


 それも、みんな、げんきだったから。

 すこし、むりを しすぎたのかもしれません。

 エアは、ちいさく ためいきを つくと、
 ふとんに ふかく もぐるのでした。


 だれかの ノックする おとが きこえて、
 エアは めを さましました。

 ちいさな こえで、へんじを する エア。
 よわく かぼそい こえです。


 ドアを あけて はいってきたのは。
 エアの たくさんの なかまたちでした。

 とおい まちの たんこうふ。
 みずいろ じてんしゃの てんしゅ。
 キャンディーの かおりのする まちのひと。

 がっちりとした あおいかみの せいねん。
 りんごばたけの おじいさん。
 あか あお きいろの ぼうしをかぶった ひと。

 おくびょうな おう アフラ。
 ぎんかを くれた しょうねん。
 アリと キリギリスと しろいヤギと くろいヤギも。

 みんな、みんな、
 エアの おみまいに やってきたのです。


 エアの めから、なみだが あふれました。
 うれしくて、うれしくて、たまらなかったのです。

 「だれかの しあわせを ねがうように、
  じぶんの しあわせも みつけないとね」

 ペンダントをした おんなのひとが、
 カーテンを あけてくれました。

 そらには、もう はいいろの くもは ありません。

 とおくのまちの パンやさんが やいてくれた パンを、
 みんな、おいしそうに ほうばるのでした。
 

執筆:2008年11月27日 00:00 作:まみや

エア と ふたつの こえ

 ちいさな もりのなかに、
 ふたつの おこった こえが ひびいています。

 もりは、すこしずつ その すがたを しろく そめ、
 ふゆの おとずれを まっているようでした。

 アリとキリギリスが、
 たくさんの たべものを まえにして、
 いいあらそって います。

 エアは、それを なだめるように、
 それぞれの はなしを ききはじめるのでした。


 もりに ふゆを こえる たべものが とどけられました。

 とおい くにからの おくりものです。

 アリは、おくりものを あてにすることなく、
 はるから あきまで、
 まいにち まいにち たべものを たくわえ つづけました。

 キリギリスは、そんな アリたちを ばかにするように、
 はるから あきまで、
 まいにち まいにち あそんで くらしていました。

 おくりものには、いっつうの てがみが そえられていました。

 アリさんたちは、たべものが たくさん あるから、
 これは、キリギリスさんたちに わたして ください。

 てがみには、そう かかれていました。

 それに おこったのは、アリたちです。

 どうして、あそんでばかりいた キリギリスたちに、
 たいせつな たべものを あたえなくては いけないのだ。

 それに たいして、
 キリギリスも おこりだしました。

 どうせ、アリたちは たくさん たべものが あるのだから、
 あまらせないように、ぼくたちが もらって とうぜんだよ。

 それぞれの こえは、
 どんどん おおきくなり、もりじゅうに ひびいています。

 ついには、たべものの うばいあいになってしまいました。

 アリたちは、
 つぎつぎと たべものを すへと はこんでいきます。

 キリギリスは、おおきな からだを つかって、
 アリたちを はらいのけては、たべものを うばっていきます。

 うばいあいは けんかに なり、
 やがて、おおきな おおきな あらそいに なっていきました。

 そのときです。

 

 エアの おおきな こえが、
 もりの あらそいを かけぬけました。

 おどろいた アリと キリギリスは、
 もっていた きのえだや ちいさな いしを あしもとに おとしました。

 どうして、みんな なかよく できないのでしょうか。
 どうして、おなじ もりの なかまなのに あらそって しまうのでしょうか。

 アリは、キリギリスに、
 どうして、たべものを あげられないのでしょうか。

 キリギリスは、アリに、
 どうして、たべものを わけてほしいと いえないのでしょうか。

 たべものは、けんかを するために、おくられたのでは ないのです。
 たべものは、なかよく ふゆを こすために、おくられたのです。

 それを。

 それを、どうして、
 アリも キリギリスも わからないのでしょう。

 エアは、それが、かなしくて かなしくて しかたありませんでした。

 そのすがたに、
 いっぴきの アリが、すから たべものを はこんできて、
 そばにいた キリギリスに てわたしました。

 キリギリスは、なみだを ながして、
 てわたされた たべものを だきしめました。

 あっちでも、こっちでも、
 アリの やさしさと、キリギリスの なみだが うまれました。

 エアも ゆっくりと かおをあげると、
 しずかに ほほえみました。

 

 「あいてを おもいやれば、こんな おくりものなんて いらないのにね」

 

 そらは すっかり、よるに なっていました。

 みあげた つきが、いつもより きれいに みえます。

 ちいさな もりのなかに、
 ふたつの よろこびの こえが ひびいているのでした。
 

執筆:2008年11月13日 00:00 作:まみや

エア と しろい ヤギ、くろい ヤギ

 そこは、ふかい みどりの もり。
 しろい ヤギと、くろい ヤギが くらす、しずかな もり。

 きぎは、ふゆの おとずれを ささやきあい、
 かぜは、おとを たてずに ながれて いきます。

 まっしろく ぬられた、おうちが ひとつ。
 そこに おおきな こえが ひびきます。

 けがをした くろい ヤギの せわをしていた エアは、
 そのこえに もりの なかを かけていくのでした。


 しろい おうちは、
 その いろと おなじ、しろい ヤギだけが、
 すむことを ゆるされた いえ。

 その なかで、
 すうとうの しろい ヤギが、なにやら さわいでいます。

 エアが、なにを さわいでいるのか たずねると、
 いちばん おおきな ヤギが せつめいを はじめました。

 もりの きぎが かれてきている。
 ふゆが やってくるのだ。

 それも、
 おおきな おおきな ふゆが。

 いまのままでは、
 ふゆを こえるだけの くさを よういできない。

 どうすればいい。
 どうすればいい。

 あっちの もりでは、ウサギが たおれ、
 こっちの もりでは、リスが にげだした。

 どうすればいい。
 どうすればいい。

 はなしあいは、いつまでも こたえを だせないでいました。

 そして、ある ヤギが いいました。

 これも、すべて あの、くろい ヤギのせいだ。
 あいつらが、もりの くさを たべてしまうから、
 われわれに くさが のこらないのだ、と。

 ずっと。
 ずっと、こんな りゆうで、きずつけられてきた、くろい ヤギ。

 なんねんも、なんねんも。
 この もりに すんでいたのは、くろい ヤギのほうなのに。

 ちからが ないから。
 あらそいが きらいだから。

 ただ、くろい。
 そんなことで、おなじ ヤギから、いしを ぶつけられる、くろい ヤギ。

 もりの きぎは、いつも、
 くろい ヤギたちを いやすように、やさしく ゆれていました。

 どんどん はげしくなっていく、
 くろい ヤギへの つめたい ことばに、
 エアは おおきなこえで さけんでいました。

 そのときです。

 いっとうの くろい ヤギが、
 はじめて しろい おうちに やってきました。

 もちろん、しろい ヤギたちは、
 その くろい ヤギを おいかえそうと ひっしになります。

 しかし、その ヤギを かこむように、
 ほかの くろい ヤギが しろい ヤギを おさえつけました。

 くろい ヤギは、
 しろい ヤギたちに むかって いいました。

 まだ、くさは のこっている、と。

 ウサギが たおれた もりに だって、
 リスが にげだした もりに だって。

 くさは まだ、のこっているのです。

 まだ あるものを たいせつにせずに、
 なくなったのを だれかの せいにする。

 そんなところに、こたえなんて なかったのです。

 しろい ヤギたちは、われに かえって、
 すぐに もりじゅうの くさを あつめに いきました。

 としおいた しろい ヤギが、
 しずかに たちあがりました。

 そして、

 くろい ヤギに、その いすを あけわたしたのです。

 いっせいに、くろい ヤギたちが こえを あげました。
 その こえに こたえるように、すうとうの しろい ヤギも こえを あげました。

 あたらしい、しろい おうちの はじまりです。

 「ながく、つらい じかんが あった。
  だからこそ、だれかの いたみが わかるんだ」

 しずかな もりに、よろこびの かぜが ふきぬけました。

 エアが まどのそとを のぞくと、
 もりの きぎが うれしそうに、ざわざわと しているのでした。

執筆:2008年11月 6日 00:00 作:まみや

エア と ぎんかの つかいみち

 そこは、まずしい むら。

 たべるものも すくなく、
 はたらく ばしょも ない むら。

 これから、
 せかいは どんどん さむくなるというのに、
 むらの ひとたちは ふゆを こえる したくすら できません。

 てにもった パンを ちぎっては、
 こどもたちに あたえていた エアは、
 じぶんの ちからの ちいささを かんじるのでした。


 あるひのこと。

 むらは きゅうに げんきな こえに つつまれました。

 おしろの おうさまの つかいが、
 いちまいの かみを もってきたのです。

 まずしい むらの ひとたちに、
 ぎんかを いちまいずつ さずける。

 そこには、そう かかれていました。

 むらびとたちは、
 てをとりあって よろこびました。

 これで、ふゆを こえられる。
 これで、おなかが いっぱいになる。
 これで、あたたかな ふくが かえる。

 エアは、その うれしそうな すがたに、
 いっしょになって よろこびました。

 しかし、

 こころの どこかに くろい もやもやが のこっているのでした。


 つぎのひ。

 おしろから、すうにんの へいしが やってきました。

 そして、ばしゃの にだいから、
 おおきな ふくろを とりだします。

 なかにはいっているのは、
 むらびとに くばられる ぎんか でした。

 へいしは、むらびとを いちれつに ならべ、
 ひとり ひとりに、ぎんかを てわたしていきます。

 むらびとではない エアにも、
 へいしは ぎんかを てわたしてくれました。

 いちばん はじめに ぎんかを うけとった むらびとは、
 いそいで むらの レストランに かけこみました。

 にばんめに ぎんかを うけとった むらびとは、
 あたたかそうな コートを えらびはじめました。

 さんばんめに ぎんかを うけとった むらびとは、
 かぞくと たびにでる けいかくを はじめました。

 みんな、みんな、
 じぶんが ほしかった ものを かうために、
 ぎんかを つかいました。

 その ぎんかを うけとった おみせのひとも、
 じぶんの おみせを おおきくすることに、
 ぎんかを つかいました。

 そのときです。


 ひとりの しょうねんが、
 めのふじゆうな おばあさんの ところへ あゆみよりました。

 そして、いま うけとった ばかりの ぎんかを、
 おばあさんの てに そっと にぎらせたのです。

 しょうねんの おかあさんが、
 おどろいた かおをして、
 どうして そんなことを するのか たずねました。

 しょうねんは えがおで こたえます。

 おばあさんに、つえを かってほしいんだ、と。

 むらびとたちが、あしを とめました。

 おばあさんは、しょうねんの ことばに、
 なみだを ながして おれいを いいました。

 なんども、なんども おれいを いいました。

 しょうねんは、おばあさんに てをふると、
 いつものように、すなばに あそびにいきます。

 エアは、しょうねんを よびとめると、
 その ちいさく あたたかなてに、
 そっと ぎんかを にぎらせました。

 それを みていた おかあさんも、
 なんだか はずかしくなって、
 てにもった スカーフを おみせのたなに もどしました。

 いちばん はじめに ぎんかを うけとった むらびとは、
 ごちそうを たのむのを やめて、
 ちいさな ケーキを ちゅうもんしました。

 むすめの たんじょうびを いわうことにしたのです。

 にばんめに ぎんかを うけとった むらびとは、
 あたたかそうな コートを たなに もどして、
 マフラーを あむための けいとを さがしだしました。

 かぞく みんなが あたたかく なるように です。

 さんばんめに ぎんかを うけとった むらびとは、
 かぞくと たびにでる けいかくを とりやめました。

 むらの ちかくにある やまみちを、
 のんびりと さんぽすることに したのです。

 それを みていた、むらびとたち ぜんいんが、
 もういちど、ぎんかの つかいみちを かんがえ はじめました。

 「じぶんではなく、だれかのために。
  それが、せかいを あったかく するんだ」

 つめたい かぜが ふく むらに、
 あたたかな かぜが ふいた ような きがしました。

 だれかに よばれて ふりむいた エアの ひとみに、
 りょうて いっぱいの キャンディーを もっている、
 おんなのこの すがたが うつっているのでした。

執筆:2008年10月30日 00:00 作:まみや
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